2017年2月度月例会イベント「ボルジア家の黒真珠を探せ! 第4回」公開!(問題編)
【問 題 編】
私が午後遅くベイカー街の下宿へ戻ると、ホームズは物凄い臭気を発する化学実験をしていた。
「おいホームズ、早く窓を開けてくれよ。この卵の腐ったような臭いには我慢ができない。」
「わかった、すぐに窓を開けるよ。今、硫黄にナトリウムやカリウムを反応させていたんだが、これはきわめて重大な証拠なんだ。これで、博士の死が毒殺であることは間違いないな。」そう言いながら、ホームズは通りに面した窓を開けた。
「ところでワトソン、ランガム・ホテルの昼食は美味かったろう。おごりときては、なおさらだ。しかも、何かいいことがあったらしいね。」
ホームズは私の姿をじろじろと観察しながら、こう言った。
例によって、私は、ホームズがどうやって真実を言い当てたのか訳がわからなかった。昼過ぎに下宿を出るとき、ホームズは熱心に何かの書類を熱心に読んでいたので、私は「ちょっと出かけてくる」とだけ言い残して外出したのだ。
「そんなに不思議かい? 君の白いシャツの左の袖口についているのは、間違いなくグレイビーソースだ。しかもかなり濃い。こういうソースを出すレストランはロンドンには数か所しかない。」
「しかし、なんでランガム・ホテルだとわかったんだい?」
「初歩的なことさ。君は出かけたときも、帰ってきたときも、馬車は使わなかった。ここから歩いていけるレストランで、こんな濃いグレイビーソースを出すところとなると、まずはランガム・ホテルが思い浮かぶね。」
「なんで、おごりだとわかったんだ?」
「君の財布は、夕べから机の引き出しに入ったままだろ。君は金を持たずに出かけたわけだ。そうなると、相手のおごりとしか考えられない。そのうえ、一番いい服は着ていないから、相手が女性でないのは確実だ。」
「すべて君がおっしゃるとおりだよ。しかし、これだけは言っとくが金は関係ないよ。このことはよく覚えておいてくれ。だが、いいことがあったと、なぜわかった?」
「ワトソン、鏡を見てみろよ。君の英雄気取りのにやけた顔を見れば誰でもわかるさ。大方、雑誌の編集者から好条件で原稿の依頼でもあったんじゃないのかい。」
「参ったな。君には隠し事はできないようだ。だが、英雄というのは取り消してくれ。英雄は関係ない。それはそうと、さっき君が熱心に読んでいた書類は何だい?」
「これかい? 君もボルジア家の黒真珠が盗まれたのは知ってるだろう。これは、その隠し場所を示す書類なんだ。君も読んでみるかい。」といって、ホームズは私に4枚の紙を渡してよこした。
4枚の紙は、小学生の解くような易しい算数の計算問題が書かれたテスト用紙だった。
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